(動画はカナダのTV番組16×9のポリグロット特集。YouTubeで人気のSteve Kaufmann氏,Tim Doner氏,Richard Simcott氏も出演している)
世の中には「ポリグロット」と呼ばれる人々がいます。
5ヶ国語も10ヶ国語も操る彼らは英語一つに苦しむ多くの日本人の目には別世界の生き物のように映るかもしれません。
いわゆる"YouTube Polyglots"達がもてはやされるようになってから数年経ちますが,今でも複数言語での自己紹介動画のようなものがアップされる度にちょっとした話題になることから,ポリグロットへの憧れを持つ人々は多いようです。
彼らは特別な脳の持ち主なのか?
それとも学習法に秘密が隠されているのか?
私達もポリグロットになることができるのか?
今後数回に分けて世界の多言語話者達を紹介しつつ,上記の謎を探ってゆきたいと思いますが,まずは以下のことを知っておいて損はありません。
▽各言語間の関連性が鍵
日本人が学習する外国語といえば,これはもう圧倒的に英語です。
長年の学校教育や自学自習を経てもなかなか思うように話せるようにならず,多くの人が苦手意識を抱いています。
もちろん教育の質や自学自習のやり方などの問題もありますが,基本的には英語は日本人にとってそれだけ習得が難しい言語なのです。
では他の外国語はどうなのでしょうか?
ついつい英語にばかり気を取られがちですが,当然ながら地球上には膨大な数の言語が存在します。
そしてその中には文字体系,文法体系,発音体系等の観点から,日本人にとって比較的習得が容易とされている外国語もあるのです。
韓国語やインドネシア語,トルコ語などがその代表例としてよく挙げられますね(参考:ディラ国際語学アカデミー「言語別の推奨学習時間数」)。
もちろん,外国語である以上,難易度が相対的に低いとは言ってもなかなか一筋縄ではいきませんが,例えば韓国語,インドネシア語,トルコ語,スワヒリ語を満足に使うことのできる日本人がいるとして……その人はもう何処へ行っても恥ずかしくない,ポリグロットですよね。
更に楽しいことには,そうして身に付けた外国語Aにも共通点が多い外国語Bが存在するであろうことです。
このように関連性の高い言語を一つ一つ習得してゆけば,私達がポリグロットになることも夢ではありません。
実際,多言語話者の中にもまずは母語と共通点の多い言語から学び始めたという人が少なくありません。
▽一つの言語での成功体験が支えになる
幼少期にバイリンガル環境で育ったような人は別として,多くの人にとって最も難しいのは第一外国語の習得でしょう。
果たして自分が満足に英語が話せるようになる日はやって来るのだろうか?と自らを信じ切れない人も多いと思います。
しかし,ひとたび外国語を身に付けるとその成功体験が自信となり,思うように語学力が伸びない時でもコツコツと学習を継続することができるようになります。
▽結局はモチベーションが大事
しかし,最後に物を言うのは何と言ってもモチベーションです。
学習言語の難易度がどうあれ強い動機付けがあれば前途洋々,外国語の海で泳ぎ続けることができるでしょう。
ポリグロット達に最も共通することは,皆が外国語を愛してやまない人々であるということなのかもしれません。
▽余談:英語と関連性の強い言語は?
とはいえ,このブログをご覧になっている方の大半は英語学習者だと思います。
では仮に皆さんが英語をかなり満足できる水準まで身に付けたとしたら,一体何が起こるのでしょうか?以下に興味深いデータがあります。
(以下,Wikibooks:Language Learning Difficulty for English Speakersより抜粋・和訳)
カテゴリー1: 英語と密接に関連する言語 23〜24週間(576〜600時間の授業)を要する
アフリカーンス語,カタルーニャ語,デンマーク語,オランダ語,フランス語,ガリシア語,イタリア語,ノルウェー語,ポルトガル語,ルーマニア語,スペイン語,スウェーデン語
(抜粋・和訳終わり)
上記はアメリカ国務省のForeign Service Instituteが1973年に発表した,アメリカ人のエリートさん達に対する外国語研修の成果に関する資料からの抜粋ですが,これによると英語の母語話者にとって上記11言語は習得が最も容易な部類に属するとのことです(正確には読み書きに関してGeneral Professional Proficiencyに達するまでに要する授業時間を算出している)。
つまり,私達が十分に英語力を磨き上げた暁には,比較的容易に習得できる外国語の選択肢が大幅に増えるということです。これは夢が広がりますね!