▽「ゆっくりはっきりした教材から徐々にステップアップ」?
これは必ずしもリスニング学習法として誤りではありませんが,この方法だと上達速度がなかなか上がらなくなる恐れがあります。
というのも,一般に遅く読まれた英語と早く読まれた英語ではリエゾン(音の連結)やリダクション(音の脱落や弱化)等の発音の変化が生じるため,「ゆっくりはっきり英語」ばかり聴いていた人が高速英語に切り替えた時点で全く歯が立たなくなることがあるのです。
例えばゆっくりはっきり英語では一語一語しっかり "step on it" と聴こえるものでも,ナチュラルスピードでは「ステポニッ」としか聴こえないかもしれませんし,"finish it up" なんか「フェナシナッ」としか聴こえないかもしれません(笑)。
ナチュラルスピードの英語が聴き取れるようになるには,やはりナチュラルスピードの英語を教材として用いる必要があります。
一方で,高速英語を低速再生する学習法はリスニング・発音の学習上有効です。発音の省力化を学ぶことができるからです(発音の省力化はとても重要な考え方なので,後日別の記事で触れたいと思います)。
例えばCNN English ExpressのAnderson Cooper 360の音声を0.5倍速で聴くなどしてみると,ネイティブスピーカーが如何に発音を省力化しているかがよくわかります。
まずこの省力化を知識として知り技能として身に付けなければ,いくら発音練習を積み重ねても早く滑らかに英語を話せるようにはなりません。
TOEICやオーディオブック等でしかリスニングを勉強してこなかった人は,ぜひ一度上記のような高速英語の低速再生を試してみてください。とても良い経験になります。
▽「低速英語の◯倍速再生に慣れれば高速英語にも対応できる」?
上記の理由から,これも誤りです。
一字一句はっきりと読まれた英語はどれだけ高速再生しようとも一字一句はっきりとしたままですので,ガンガン「発音の省力化」がなされるナチュラルスピードの英語を聴き取る練習にはなりません。
まあ時間の節約にはよいかもしれませんが……
続きはまた後日。