2015/04/24

英語達人列伝


私がTOEICの学習を始めた頃「まずはモチベーションを高めることから始めなくては!」などと考えて,英語達人たちの本を読んだり自己啓発本を読んだりしていました。

で,すっかり勉強した気になって,その日の「学習」を終えて眠りにつく,という日々を続けました(笑)

つべこべ言わずにさっさと具体的な勉強を始めればいいんですよね。

ところで,先程本棚の整理をしていたらその時期に読んでいたと思われる本が1冊出てきました。

英語学習者の間では結構有名な本ですね。

この書籍では新渡戸稲造や岡倉天心,斎藤秀三郎ら近代の英語達人の英語力や英語に対する圧倒的な熱意を象徴するエピソードの数々を紹介しており,やる気を奮い立たせる言葉が溢れています。

「スコットという優れた教師の手引きもあって、彼は英作文と英文学読解を熱心に修業した。このころ身についた多読の習慣は、のちに彼の眼病を誘発したほどである」p.14

「斎藤の場合、その才能もさることながら、勉強量が尋常ではなかった。工部大学校在学中、彼は図書館にあった英書を読みつくし、『大英百科字典』(全三十五巻の第一〇版ブリタニカ百科事典のことだと思われる)を二度読んだという」p.60

「中学時代に英語に異常なほどの興味を抱き、「英語屋」のあだ名で呼ばれた西脇順三郎は、英国人と完全に同じくなるほど英語に熟達することを目的とし、すべての時間を語学の修得に費やした。『ナショナル・リーダー』を丸暗記し、英語でノートを取り、そして、どこを聞いてもわからないところがないほどまで『井上英和』を読み込んだ」p.202

……なんかこう,身体の中からふつふつと湧き上がってくるものがありますよね。

ところで,こんな本を紹介しておきながら,私は過去の英語学習者たちの語学力を詳細に検証することなく,むやみやたらに達人だ偉人だともてはやす風潮が好きではありません(※)。

数年前もtwitter上で「私の師匠の◯◯先生は母語話者顔負けの英語力で,発音は完璧(?),話し言葉に文法的誤りは皆無,日系アメリカ人に間違えられることもしばしばだった。それに比べて現代の学習者たちの体たらくぶりときたら……(以下略)」みたいなことを書いている人がいました。

それは凄い人がいたものだなあなんて思っていたのですが,後になってYouTubeに「先生」ご本人の肉声を聴ける動画がアップされているのを発見し視聴してみると……

いやいやいや,思いっ切り日本人英語じゃん……

資料があまり残っておらず語学力の検証が難しい過去の「達人」たちのエピソードは何かと誇張・美化されるきらいがあります。

一方で,これだけ各種メディアが発達した現代では何もかもオープンになり,「得体の知れない凄さ」を演出し難くなりました。

確かに昔と違い猫も杓子も英語を勉強する今日,学習者の平均レベルが下がっていても不思議ではありません。

しかし,中にはこの恵まれた英語学習環境をフル活用して素晴らしい(それこそ過去の「達人」たち顔負けの)語学力を身に付けている人々も当然いるのです。

私たちが参考にすべきはそうした人々の英語への取り組み方ではないでしょうか?

でも,『英語達人列伝』はお薦めですよ!

※上記の本の登場人物を揶揄しているわけではありません。彼らは実際素晴らしい学習者達だと思います。


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