2015/04/20

ポリグロット(多言語話者)の世界【2】Steve Kaufmann

(Steve氏がYouTubeへの投稿を始めた2007年頃の動画。2015年現在,彼の学習言語数は15に達している)

今回はカナダ人ポリグロットであり,熱心なYouTuberでもあるSteve Kaufmann氏をご紹介します。

▽古希を迎える今もなお活力溢れる元外交官のLanguage Lover

モントリオールで育った彼は名門マギル大学在学中,ある先生と出会ったことにより外国語学習(フランス語)に開眼,フランス屈指のエリート校パリ政治学院(Institut d'Etudes Politiques de Paris)にて3年間政治経済を学びつつ,フランス語能力をめきめきと伸ばしました。

卒業後は外交官として中国に赴任することが決まり,カナダ政府の支援のもと,香港にて1日10時間中国語(Mandarin Chinese)を集中学習する日々を送っていたのですが,中国の職場のクソな上司(曰く"complete jerk"!)に愛想を尽かした彼は「独学で日本語を習得するから日本へ赴任させてほしい」とカナダ政府へ願い出たのでした。

無事その申し出が受け入れられたはよいものの,時代は1960年代後半,中国では良質な日本語学習教材などなかなか手に入りません。

取り敢えず書店で見つけた教科書やテープを購入し学習を始めてはみたものの,その教材には日本語の挨拶として「お目にかかれて大変光栄に存じます」という表現が掲載されていたということですから,その苦労は想像に難くありません。

その一方で,彼は中国の日本大使館に勤める日本人と週2回のLanguage Exchangeを行っており,これが功を奏したそうです。

そして1971年に晴れて日本へ行くことになったSteve氏。実務をこなしつつListeningとReading中心の日本語学習を続けてゆく中で,彼の日本語能力は大幅に向上しました。

その後外交官を辞めてからは材木の輸出入ビジネスに従事することになりますが,その間も彼の外国語学習熱は治まるどころか年々高まってゆくばかり。

学習言語の数が10を少し超えた2007年頃,息子のMark氏と共にオンライン外国語学習サービスLingQ(リンク)を立ち上げることになり,2015年現在もLingQを利用した外国語学習に勤しんでいます。

▽外国語学習の3本柱

彼は外国語学習上最も重要な要素として以下の3つを挙げており,YouTube動画の中でも事ある毎にその重要性を訴えて続けています。

1. Attitude(態度)

彼は勝負の70%は学習者の態度によって決まるとし,学習者は以下のような態度を保つべきとしています。

  • 異文化に対する強い興味関心と,自らもその一部になりたいというオープンさ
  • 外国語を修得するという強い決意や自信
  • 完璧主義に陥らずに学習プロセスそのものを楽しむ姿勢
2. Time(時間)

また,外国語は一朝一夕で身に付くものではないため,以下の様な時間への配慮が決定的に重要になります。

  • 日々の学習時間を十分に確保しているか
  • その学習時間を効果的で楽しいものにしているか
  • 学習時間を短縮すべく,よい道具に投資をしているか(e.g. mp3プレーヤーやiPad, オンライン辞書など)
3. Ability to Notice(気づく力)

更に,学習者は惰性で学習するのではなく,学習言語で何が起こっているのかを鋭敏に感じ取るよう心掛けることが重要としています(e.g. 発音やイントネーション,文の構造など)。

そして,この気づく力を磨く有力な手段として,彼の学習法のトレードマークである大量のListeningやReading,母語話者によるWritingの添削,時折文法書を参照することなどを挙げています。

▽オンライン学習システム "LingQ"

彼は自らが主催する学習システムLingQを利用すれば上記のポイントを押さえた効果的な学習ができると主張しており,創業者である彼自身もこのサービスのヘビーユーザーです。

このLingQですが,何を隠そう私も数ヶ月間有料会員だった時期があり,かなりお世話になりました。これについてはまた別個に記事を書きたいと思っていますが,日本人英語学習者にもお勧めできるサービスです。

▽ポリグロット・コミュニティ屈指のYouTuber

このように精力溢れるSteve氏ですが,彼は熱心なYouTuberでもあり,LingQの宣伝も兼ねてこれまでに数百本もの動画をアップしています。

彼の外国語学習哲学について非常に聴き取りやすい英語で語っていますので,日本人英語学習者の教材としても最適ですよ。

彼のYouTubeチャンネルはこちらからどうぞ。



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